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ライト、よかった。
今、死神の眼を持っている私には、おまえの寿命が見えない。
やはりおまえはキラではなかった。
私はずっと疑っていた。
おまえがキラではないかと、いやキラであるはずはないと、何度も疑い、そのつど否定し、それでも疑わずにはいられなかった。
今、ようやくおまえがキラではないと信じることが出来て、私はこれで安心して逝ける。
ライト。
小さいころから、おまえは本当にいい子だった。
正義感が強くて、努力家で、勉強でも運動でも何をさせてもこれ以上ないくらいに出来のいい子だった。
どんなに期待をしても、いつもその期待以上の結果をおまえは私たちに返してくれた。
あまりにおまえが出来すぎるので、私はいつしかそれに慣れ、少し傲慢になっていたかもしれない。
それがおまえを、こんな風にしてしまったのかもしれない。
しかし本当は、おまえがこの世に生まれてきてくれて、生きていてくれる、ただそれだけで私たちにとっては福音だったのだ。
ライト。今、死に臨んで、私にはようやくおまえの怒りがわかる。
殺せ、殺せ殺せと叫ぶおまえの声が。
今、おまえは私が死に赴くことよりも、あの男を殺すことだけに心奪われている。
もういい。
もう殺すな。
ライト。キラは悪だ。人を殺すことは悪だ。
しかし、ライト。覚えているか。
あの日私がおまえに言ったことを。
本当に不幸なことは、そんな能力を持ってしまったということだ。
その力で、人を殺すことに慣れてしまったということだ。
今、死神の眼を持っている私には、キラの考えていることがよくわかる。
キラの怒り。焦燥。絶望。そして、孤独。
メロ。MIHAEL=KEEHL。
あの男の名前と寿命がはっきり見えたとき、この男をどうとでもできるのだと思ったとき、私もまた一瞬その誘惑に駆られた。
キラ、おまえの殺人もそうやって始まったのだろう。
そして誰も止める者のないまま、おまえはその力に慣れていったのだろう。
ライト。
おまえがキラでなくて本当によかった。
しかしライト。
わかって欲しい。
もしおまえがキラであったとしても、私はやはりおまえのことを愛している。
たとえおまえがそのノートで何千人もの命を奪ってきたとしても。
今ここで、私がこうして死んでいこうとしている、それがたとえおまえの筋書き通りだとしても。
ライト。聞こえるか、ライト。
視界が暗くなる。もうおまえの顔が見えない。
ああ、雨が降る。暗闇のなかに暖かな雨が。
だがもう何も見えない。何も聞こえない。
お前の叫びも。
許してくれ。ライト。
ライト。
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