L.A.コンフィデンシャル



 夜神月は、キラだった。

 けれど、「Lとしてキラ捜査をしていた警察官がキラだった」という事実はあまりにも社会に与える影響が大きいと判断され、警察とSPKはその事実を隠すことに決めた。夜神月の遺体は極秘裏に司法解剖に廻され、デスノートの存在は闇に葬られた。夜神月=キラという事実は世間には一切公表されず、もちろん遺族にも知らされなかった。
 
 夜神月。
 警察庁情報通信局情報管理課所属。警察庁キラ対策本部の一員としてキラ捜査に参加し、2010年1月28日、大黒埠頭YB倉庫でキラ事件の捜査中、狂信的なキラ信者に拳銃で撃たれ殉職。24歳。

 これが公式に残された彼の記録だ。
 検屍記録では、死因は心臓発作ではなく、キラ信者によって撃たれた銃創部からの大量出血によるショック死とされていた。もちろんこれも嘘だ。夜神月は、キラ信者に撃たれたのではない。
 夜神月を撃ったのは僕だ。
 でも、そんな記録はもうどこにも残されていない。僕と、それから相沢さんたち捜査本部と、ニアたちSPKメンバーの記憶の他には。
 

 拳銃を持つと、僕は今でもあのときのことを思い出す。
 あのとき、どうして引き金を引いたのか。自分でもよくわからない。
 最初の発砲はもちろん、夜神月を止めるためだった。相手はキラだ、やらなきゃやられる。そう思って無我夢中で二発、三発と撃ち込んだ。
 でも、最後の一発はそうじゃなかった。
 そこに転がっていたのは、武器を失い、血まみれで地べたに這いつくばる惨めな男でしかなかった。それでも僕は彼に銃を向けた。威嚇でも正当防衛でもなんでもなかった。ただ、殺してやる、絶対にこいつを殺してやると思って、僕は拳銃を構えた。もしあの瞬間、相沢さんたちに止められなかったら、僕の弾丸は確実に彼の頭を撃ち抜いていただろう。

 僕は、彼が憎かった。
 裏切られた。騙された。馬鹿にされた。そんな風に思ったのかもしれない。僕がずっと大事にしていたものを汚されたような気がしたのかもしれない。ただ、無性に憎くて、悔しくて、堪らなかった。
 僕は、彼のことが好きだったのだ。
   






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100%原作ベースの松田さん…のつもりです。
松田さんたら、へたりこんだ姿勢から一瞬で銃を抜いて腕時計を撃ってるんですね。まさに神業です。
続きます。


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